6月の晴れた日、ずっと見たかった『メッセージ』を見ることが出来た。
今日はその感想を書きたいと思う。
見たかった大きな理由は監督がドゥニ・ヴィルヌーヴだってこと。
ドゥニ・ヴィルヌーヴは今年の秋に公開される『ブレードランナー2049』の監督。
だから、当然と言っていいほど見ておくべき映画だった。
映画は予告篇で見たように静かに語られる。
得体の知れないUFOが地球の12カ所に突如現れるところからストーリーが始まる。
そこに主人公の女性、言語学者のルイーズのフラッシュ・バックが挿入される。
ルイーズは軍により言語学者の能力を買われ、異星人とコンタクトするために選ばれる。
映画は淡々と、異星人の姿を隠すことも無く、ひたすらコミュニケーションの段階を追って行く。
何日間もの作業の結果、異星人の文字をある程度解析して行くルイーズ。
そしてクライマックスに繋がって行くが…
ここからネタバレかもしれないので読むか読まないかご判断下さい。
中盤以降、ルイーズによって異星人とのコミュニケーションが成り立ち始めると何か不思議な感覚になって行く。
異星人の描く文字のビジュアルは非常に新鮮だ。
その文字をルイーズが読み解きつつ何かに気づかされて行く。
その気付きは観客にも伝わって行くのだが、何か違和感を感じ始める。
その違和感が何かというのは映画のラストに明かされるのだが、それこそこの映画の大きな魅力。
ルイーズは異星人に「武器を与える」と言われる。
その武器というものは具体的に明かされないけれど、それこそがルイーズのフラッシュ・バックと繋がって行く。
映画を見終わると「武器」が何かわかるけれども、そこがSF的。
そして、ラストに結ばれて行くストーリー展開こそ、まさにSF。
ドゥニ・ヴィルヌーヴはあなたが今見ている現実は現実ですか?と投げかける。
「あなたは未来の結末がわかっていても愛を選びますか?」
そんな深い問いかけも投げかけられる。
テリー・ギリアム監督の『12モンキーズ』のもととなったクリス・マルケル監督の『ラ・ジュテ』を見た時のような不思議な気持が蘇る。
邦題の『メッセージ』も良いけれど原題の “Arrival” と言うのが涙が出そう。
劇中「ヘプタポッド」と名付けられる異星人の描く文字は円形をしている。
ヘプタポッドの文字には時間の概念がないことがルイーズによって明かされる。
『メッセージ』は、この時間の概念がない文字が中心に語られるからこその時間をめぐる物語であり、ルイーズが娘の名をハンナ”HANNAH”にしたのもうなづける。ハンナ”HANNAH”は後ろから読んでも同じ名前と劇中で語られる。
“Arrival” という原題は最後にスクリーンに映し出されるけれど “Arrival” には「到着(すること)、到着した人、出生、新生児」の意味がある。一体、誰がどこに到着したのかを見ながら感じ取るといっそう素敵な映画体験になると思う。
そんなSFファンが喜ぶような多様なメッセージが秘められた映画を作ったドゥニ・ヴィルヌーヴの映画である『ブレードランナー2049』への期待が高まったのは言うまでもない。
読んでいただき、ありがとうございました!
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